5座談会 100年先も選ばれる
故郷であるために~5つの酒造メーカーができること~

5座談会

参加者
酒蔵ツーリズム推進プロジェクトメンバー

  • 竹平 考輝氏(南信州ビール株式会社 常務取締役)
  • 折田 浩之氏(本坊酒造株式会社 マルス信州蒸溜所 所長)
  • 北原 岳志氏(酒造株式会社長生社 代表取締役)
  • 松下 一成氏(米澤酒造株式会社 常務取締役)
  • 石川 博康氏(養命酒製造株式会社 健康の森・緑化グループ)

酒蔵ツーリズムを通してこれからの100年を考える

竹平 今回のプロジェクトは、駒ヶ根観光協会と伊南DMO設立準備会が国税庁の「酒蔵ツーリズム推進事業」に応募したことから始まったんだよね。
折田 全国から122もの応募があったらしいね。
竹平 そうそう。その中から全国で16カ所がモデル地域に決まって、みなこい(宮田村・中川村・駒ヶ根市・飯島町)エリアも選ばれた。全国的に見ても、ここほど多種多様なお酒がそろう地域は他にはなかなかないというのが大きな理由だと思う。日本酒でしょう、クラフトビール、ウイスキー、リキュール、薬用酒とバラエティーに富んでいる。なかでも養命酒は400年の歴史がある。そんなに古くから薬用酒を造っていた地域であるということは自慢できるよね。
石川 はい、ありがとうございます(笑)。養命酒は江戸幕府ができた時に徳川家康にも献上していて、「天下御免萬病養命酒」として免許されたと伝えられていますから。
北原 おお、すごい話だね。今回はそのみなこいエリアにある5つの酒造メーカーが集った。ミッションは、100年先も選ばれる故郷であるために酒造りを通して地域を「紡ぐ」「伝える」「磨く」ってことだよね。
松下 この地域に暮らす人たちが地元で造られているお酒を通して、自分たちの故郷を誇りに思ってくれるようになったらうれしいですよね。
竹平 目指すとこはそこ。他のエリアにこれだけは負けないというのは、自然環境の豊かさと2つのアルプスに由来する仕込み水、きれいな空気、四季折々の自然の香り。中央アルプスの伏流水を使うと酒質がやわらかく、口当たりもまろやかになるのは実際に常日頃感じているからね。自然環境の豊かさは製造スタッフの心を穏やかにしてくれるし。
折田 酒造りの文化を地域に残していくのが我々の使命だよね。
松下さんと北原さんの写真
日本酒のこれからの100年を熱く語る松下一成さん(左・米澤酒造)と北原岳志さん(長生社)
越百の写真
越百(駒ヶ根市)

水とロケーションが育む多種多様な酒造りが魅力

竹平 ぼくら南信州ビールはご存知の通り長野県初の地ビールメーカーとして生まれたんだけど、地域との協力と共存共栄を大切にしてきた。酒造りは文化性の高い事業だと思っているから、この地で酒を造る意味や理由を大切にしていきたいと思っている。それには自然環境との調和が重要。超軟水の仕込み水をはじめ、原料となる農作物や果樹が育つ環境、気候、土壌性質、地形など、人間の力ではコントロールできないことと対峙して酒が生まれることもブランドの一部だと考えている。
折田 我々もマルス信州蒸溜所の価値は、宮田村の唯一無二の水とロケーションだと思っている。先達の努力にみんなが素直に敬意を払っているところや、1992年には一旦ウイスキー製造を休止するなどの苦難に耐えてきた継続性は自慢できるところだと思う。19年の歳月を経て製造を再開、2013年には「マルスモルテージ3+25 28年ワールドウイスキーアワード(WWA)で世界最高賞を受賞…。社員はみんなジャパニーズクラフトウイスキーメーカーの中核としてのプライドと品質を大切にしている。
北原 苦難…わかるなぁ。長生社も2001年に、清水の舞台から飛び降りる気持ちで、純米蔵に舵を切ったから。全量を純米酒に仕込む蔵は、全国では5番目だと言われたし、長野県のの蔵では初めてだった。まず親父を説得するのが大変だったね。まあ最後には「うちの蔵は面白いことやっとるのよ」って、人に説明していた。
純米吟醸と純米大吟醸だけを醸す純米蔵として大切にしているのは、中央アルプスから流れ出る伏流水と伊那谷に実る酒造好適米の美山錦。みんなに飲んでもらいたい酒を最高の品質にしたい! というのは、これはもう酒造家すべての夢だからね。
石川 自分の信じるより良い酒を目指して、大きな決断をしたんですね。常に飲む人のことを考えている点はうちの会社も同じです。生活者の信頼に応えて、豊かな健康生活に貢献することが我が社の使命ですから。400年という歴史を積み重ねてきた知恵と技術を生かして、養命酒だけでなく、他の商品やサービスを通してみなさんの心と身体の健やかさに貢献していきたいと思っています。
松下 私たちも2014年から、100年以上続く米澤酒造をかんてんぱぱグループで引き継いで酒造りしてきました。守り伝えること、変えていくことを間違えないようにする。これをいつも考えるようにしています。いい酒、うまい酒を造ること、地元でできた酒米を積極的に使って、時には農家さんの酒米作りをお手伝いし、農村の原風景の維持と保存に役立つこと。これを両立することで永続する酒蔵になると思っています。
  • 竹平さんの写真
    多様な観光資材とのツーリズム化を提唱する竹平考輝さん(南信州ビール)
  • 石川さんの写真
    「おいしい」はもちろん、生活者の悩みに寄り添う商品の開発もしていきたいと話す石川博康さん(養命酒製造)

伊那谷を酒の聖地、フィールドミューアジアムに

北原 ぼくはね、このみなこいの自然全体が、ひとつの大きな「酒蔵」だと胸を張って言えると思うんだ。2つのアルプスがこれほどきれいに映える場所は他にはないよね。地元の水で育った酒米を、地元の水で酒に醸すことは最も自然な流れで、できた酒を地元で飲むことで地産地消も完結する。酒造りはまちづくりだから。ぼくは、小さくともみんなが誇れる純米酒のまちを目指したいんだ。
竹平 我々も100年以上の事業継続が最終的な目的だと思っている。そしてこのエリアを酒のフィールドミュージアムにしたい! お酒の文化を知るため、お酒を好きな人たちは一度はここに来なくてはいけないエリア。わかりやすくいうと、フランスボルドーはワイン、スコットランドはウイスキー、伊那谷は「アルコールの聖地」みたいなね。今回の酒蔵ツーリズムの着地点は、酒造メーカーを基軸にした多様な観光素材とのツーリズム化だ思っている
折田 「アルコールの聖地」、いいねー。私たちも、世界中のウイスキーファンが訪れたくなる蒸留所造りを目指している。ウイスキーとキャンプや焚き火、山登り、川遊びなどを結びつけて、アウトドア専用のウイスキーを開発したり、ウイスキーとアウトドアの聖地にしたいと思っている。世界中のウイスキーファンが飲みたいウイスキー、訪れたい地であるとともに、地元からも愛されて自慢されるような蒸留所になりたいね。
松下 うちの蔵も、やはり世界を視野に入れています。もちろん賞が全てではないですが、一つの目標になっています。グループ企業になってから世界のコンクールにも多数出品しましたが、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)SAKE部門での金賞など、世界で認められたことが杜氏や蔵人の励みになりました。2020年の世界酒蔵ランキングで総合9位になれたことも、手応えの一つになっています。
石川 私たちも、この酒蔵ツーリズムを通して、「健やかさ」と「笑顔」を創造する企業として世界に発信していきたいですね
竹平 世界に目を向けるためにも、みなこいエリアの人々にとってここが豊かな自然とロケーションだと誇りに思ってもらうことが活動の原点になると思う。我々は「天空美酒の郷」の酒造メーカーとして、酒文化を通じて、このみなこいエリアが誰にとっても帰りたい故郷であり続けるように努力していきたいね。
  • 竹平さんと折田さんの写真
    みなこいエリアをウイスキーが楽しめるアウトドアの聖地にしたいと意欲的な折田浩之さん(右・マルス信州蒸溜所)
  • 日本酒の写真

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