唯一無二、
クロモジが香る
クラフトジン養命酒製造株式会社

生薬の知識を生かしジンの開発へ

2019(平成31)年3月1日、養命酒製造からクラフトジン「香の森」が発売されました。これは、和製ハーブのクロモジに18種類のボタニカルを調和させ、中央アルプス山麓の地下150mの水脈から汲み上げた天然水で仕込んだ、香り高いジン。爽やかな香りから重厚な風味、そして心地よい余韻へと移り変わるやさしい香りと味わいは、日本の深い森へといざない、心まで穏やかに導いてくれます。
そもそもジンとは、穀物などを原料とするスピリッツにハーブや果物、スパイスといったボタニカル(ジュニパーベリーは必須)で香りづけした蒸留酒のこと。ボタニカルと生薬は共通する物が多く、昔はジンが薬酒としても飲まれていたことから、長年扱ってきた素材の一つであるクロモジの香りを生かしたジンの開発が始まりました。
しかし、養命酒製造にとって蒸留酒造りは初めての挑戦でした。「蒸留とは何か?」。開発担当者たちは、まずはウイスキーや焼酎の蒸留所を訪れて蒸留について学ぶなど、全くのゼロからスタートしたといいます。また、開発当初はすべてが手探りで、蒸留器もなく、フラスコなどを用いて蒸留していました。実際の蒸留器とガラス器具では香味も大きく異なるため、自分たちで設計し、社内の工場設備を管理しているメンバーに小型蒸留器を作製してもらうなど、開発の環境も自らの手で造っていったそうです。

工場全体の写真
約36万平米という広大な森林の中にある養命酒製造駒ヶ根工場は、1972(昭和47)年に新設
クロモジの写真
クロモジは、クスノキ科の落葉低木。日本古来の香木で、高級楊枝や茶に加工されてきた歴史があります

「香の森」完成までの長く遠い道のり

「唯一無二のジンを作りたかった。そしてクロモジの魅力的な香りをお客様に伝えたいと思いました」と語るのは、開発を担当した入江陽さんです。しかし、クロモジは蒸留してみると思っていたような香りにならず、蒸留条件を変えたり、太枝の部分だけでなく、葉や細枝を組み合わせ理想的な香りを追い求めたといいます。また、共に素材として使うボタニカルも約130種類の中からクロモジの香りを引き立たせる18種類を厳選。さらに一つひとつの素材も蒸す、漬け込む、煮詰めるなど、イメージに合う香りとなる抽出方法を検証しました。ベースとなるスピリッツは、米やトウモロコシ由来のものも検討した末、クロモジの香りが最も際立ったサトウキビ由来のスピリッツを選択。9カ月間、蒸留を繰り返し、試行錯誤の末、クロモジの細枝のみを加えて蒸留した液と、その他のボタニカルを蒸留した液をブレンドする製法を生み出し、ついにレシピを完成させました。

中澤さんの写真
ドイツのアーノルドホルスタイン社製蒸留器と製造技術を担当した中澤さん
川と香の森の写真
仕込み水は、地下150mから汲み上げた天然水を使用。この水は極軟水で、ボタニカルの抽出に適し、ジンを柔らかな口当たりに仕上げてくれます

入江さんとともに何度も蒸留をしながら、レシピに合う製造工程や蒸留器の仕様を検討したのが製造技術を担当した中澤裕幸さんです。「日本にはジンの蒸留器を作っているところがなかったので、当社のジンの作り方に合った海外の蒸留器を探すのには苦労しました」と中澤さん。設備については、香りが大切な商品なので、蒸留から瓶詰まで、他のにおいが入らないよう細心の注意を払ったといいます。「最終的にはお客様が手に取って、ふたをあけたときに入江君のイメージしたクロモジの香りがしなくてはいけないと思っていました」と中澤さんは語ります。
名前はクロモジの森をイメージした「香の森」に。また、瓶も「香の森」の世界観を表現した専用のデザインが作られました。瓶の上部は丸で、底は四角の形状は、シャープさの中にまろやかさがあるという「香の森」の味わいをカタチで表現。また、中央アルプスの稜線をなぞらえてカッティングしたラベルの下部には、森がその中に広がるようにクロモジをデザインした彫刻が360度施されています。
こうして、これまでにないクラフトジン「香の森」が世に送り出されました。

夜のやすらぎの写真
「ハーブの恵み」は2020(令和2)年にリニューアルして「夜のやすらぎ ハーブの恵み」として販売
香の森とハーブの写真
入江さんはソーダ割り、中澤さんはジントニックがお気に入り。また、冷凍庫で冷やしてからショットグラスへ注ぎ、手のひらで温めて香りの変化を楽しみながらゆっくりと味わうのもおすすめです
香の森とハーブの写真

「養命酒」から未来へつながる技術

クラフトジン「香の森」の生みの親である養命酒製造は創業1602(慶長7)年以来、400年以上にもわたって「養命酒」を造り続けてきました。長い歴史の中で大きなターニングポイントになったのは、2010(平成22)年の「ハーブの恵み」の誕生だといわれます。若い人にもハーブに親しみつつお酒をおいしく飲んでもらいたいと開発された「ハーブの恵み」は15種の東洋ハーブを漬け込んで芳醇な香りを引き出した甘酸っぱいリキュールです。3年もの歳月を費やして開発し、このときに得た知見や技術は、その後さまざまな商品に生かされ、「香の森」の誕生へとつながっていきました。
今回、新たに蒸留の技術が加わった養命酒製造。誕生に関わった中澤さんは、「蒸留器が入ったので、新しい蒸留酒を造ってみたい」、入江さんは「おいしくて、健康にもいい、世界一の酒を造りたい」と未来を見据え、早くも新たな挑戦へ意欲を見せています。

引き札と入江さんの写真
9カ月間、地道な作業を続け理想的な香りを追い続けたという開発を担当した入江さん。 駒ヶ根工場の養命酒記念館では「萬病養命酒」と書かれた江戸時代の引き札(広告)も展示
養命酒製造株式会社のロゴ
社名 養命酒製造株式会社
TEL 〈工場見学・ショップ・カフェ〉
営業時間など詳しくは
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アクセス 長野県駒ヶ根市赤穂16410
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URL https://www.yomeishu.co.jp  

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