千年以上の時を経て、現代にたたずむ駒ヶ根市の名刹・光前寺。樹齢数百年の杉の巨木に囲まれた境内のおごそかな空気に包まれると、身も心も凛として、すがすがしい気持ちになります。県内屈指の大寺でパワースポットとしても知られる光前寺の魅力をご紹介したいと思います。

しだれ桜の織りなす幻想の時間に包まれる春

宝積山・光前寺は、平安時代の西暦860年、不動明王を御本尊として本聖上人が開基した天台宗のお寺です。境内全域の約6.7ヘクタールが「光前寺庭園」として国の名勝に指定されているほか、早太郎伝説やシダレザクラで知られています。


 境内にある約70本のシダレザクラが見頃を迎えるのは4月中旬頃から。「光前寺不動滝桜」や「古木の鐘楼桜」などといった寺を代表するシダレザクラが咲き誇る姿はまさに圧巻です。期間中は夜間のライトアップもおこなわれ、淡いピンク色と夜の深い紺色とのコントラストが、幽玄な世界をつくり出します。樹種が異なる数種類のシダレザクラが混在していて、開花時期も少しずつ違うので、3週間ほど、様々な桜を楽しむことができます。

いにしえのヒーロー「霊犬早太郎」に出会う

伊那谷では言わずと知れた伝説のヒーロー「霊犬早太郎」をご存知でしょうか。光前寺は、この早太郎伝説が言い伝えられているお寺としても知られています。

約700年前に光前寺で飼われていた山犬の早太郎はとても強い犬でした。遠州府中(静岡県磐田市)で人々を苦しめていた怪物退治に出かけ、見事怪物を退治しますが、深い傷を負ってしまいます。それでも早太郎は、なんとか光前寺に帰り着き、最期は寺で息をひきとったとされています。

ちょっと悲しいこのお話には諸説ありますが、最後は大好きな住職に会えたと思いたいですね。以来、早太郎は「不動大明神の化身」とされ、災難よけ、厄除の霊犬として広く信仰を集めています。光前寺には早太郎のお墓があり、早太郎のお守りや御朱印の授与もおこなっています。

光苔の優しい光に癒やされて

本堂へと続く参道の石垣のすき間には、国の絶滅危惧種に指定されている光苔が自生していることでも有名です。

光苔そのものは発光しませんが、日の光を反射し、光を放っているように見えるのがその名の由来。洞くつや岩陰を好むので、ただ参道を歩いているだけでは見つけにくいのですが、石垣のすき間をのぞいてみると、岩に張り付いてキラキラ輝くその姿を見ることができます。

見頃は4月中旬から10月頃まで。ひっそりと輝くその姿を発見できると、ちょっと幸せな気持ちにも。ぜひ、探してみてください!また、光苔は採取したり触ったりすることができません。苔を傷つけるような行為は法律で禁止されているので、遠くから眺めて優しく見守ってあげてくださいね。

天台宗 別格本山 宝積山 光前寺
所在地:長野県駒ヶ根市赤穂29
TEL.0265-83-2736